民主化か、帝国化か。前編 ーファミリーマートの上場廃止・伊藤忠商事による子会社化の背景を予想

今回は、伊藤忠商事が、関連会社であったファミリーマート株式会社を完全子会社化した事について、その背景を探り、今後の変化について、私見たっぷりに考えようと思います。ファミリーマートについては、もともと以前にコンビニ業界の比較分析を行った記事で調べており、定期的に追いかけていました。ファミリーマートは、合併と事業譲渡を繰り返しており、ここ数年、会社が安定した形を取らなかったのですが、1年ほど前に、ようやく会社の運営体制が落ち着いたところでした。ですから、そろそろ運営体制の安定が製品開発など現場に現れても良いのでは、などと、お店を回って切り口を探していました。そんな矢先の、子会社化のニュースでした。

 

実は、今回の子会社化に関しては、個人的には納得の出来事でした。ファミマの店舗で違和感を感じたからです。店を回っていて、ファミマは店舗によって、従業員数や品揃えに大きな差があるコンビニだと感じていました。夕方17時前の段階で、すでに欠品が非常に多い店舗がある一方、夜19時になっても品揃えが良い店舗もあります。

 

後述するように、コンビニの本部はオーナーに24時間営業を強制できなくなり、オーナーが24時間営業の採否を選べるようになりました。23時に閉店する店舗は、24時間営業の店舗に比べ、17時の段階でも品数やボリュームが少ない事は理解できます。とはいえ、来客数が増える夕方に欠品が散見されるのでは、発注のやり方に問題があると感じます。その発注の背後には、「閉店までに在庫をほぼ0にし、翌朝の便で商品を一新させたい」という狙いがあると思われるのですが、さらにその背後には、店舗がロス(廃棄)にかなり敏感になっている事が感じ取れます。

 

ロスに敏感になる理由は簡単で、売り上げが減少しているからだと考えられます。しかし、売り上げが減少しているからと言って、発注量(あるいは頻度)を抑えて欠品が起これば、かえって客の満足度を下げ、離客を招きます。ここで、負のループが出来上がります。では、なぜ売り上げが減るのか。理由は出店が過剰だったからだと考えます。欠品が見られる店舗に共通しているのは、近くにもう1店舗ファミマが存在し、かつその店舗の立地がより優れている事です。つまり、競合にだけではなく、同じファミマにも客を奪われているのです。これが売上高を低下させ、ロスに対しオーナーは敏感になって発注を絞り、その結果欠品を引き起こし、さらに客足を遠のかせ、売上高をさらに低下させ・・というループを作り出したのだと考えます。

 

これだけでは、伊藤忠商事との関係性は見えてきません。上述したのは、あくまで、僕が今回の事を考えるに至った経緯と想像上のストーリーです。というわけで、ここで一旦、今回の記事の全体のストーリーを示します。

 

上で説明したのは、一番左の「欠品が生じ」までです。ここまでは「欠品が散見される」という事実から、その裏を想像してみました。この後は、まず、その後の「オーナーと本部の信頼が損なわれた」に関して話を進め、その後、論点を右の二つの話に移してゆきます。

 

本部のSV(スーパーバイザー:店舗の指導、管理を執行する社員)が、自身が管轄する店舗の発注を、その店舗に同意を得ずに行っていた事がとりあげられていました(HP参照)。このお知らせでは、本部がオーナーの自主性を損なったとして、本部から謝罪の意思が表明されています。SVが、なぜ発注を勝手に行ったか。理由は、SVが上述した欠品を問題視したからだと考えます。

 

そもそもコンビニの本部とオーナーの関係性ですが、ファミマのオーナーは、ファミマの社員ではなく、個人事業主です。そしてコンビニの本部は、「ファミリーマート」「セブンイレブン」など、自社のネームブランドと運営ノウハウを個人事業主であるオーナーに貸してあげる代わりに、オーナーからロイヤリティ(手数料)を取る事で会社を運営しています(フランチャイズ方式)。そのロイヤリティは、売上高に一定の割合をかけて算出されます。

 

利益にではなく、売上高に、です。つまり、本部は、店舗の売上高さえよければ手数料を多くオーナーから貰えます。ところが、オーナー側は、売上高からロイヤリティを引かれた後、各費用(もちろん、ロスを含む)を引いた利益を、ようやく自分の所得にできます。

 

本部側は、店舗がたくさん売ってくれれば、自分たちが手数料をたくさん得られるので、店舗の売上高を増加させる事に注力します。それゆえ、本部側は店舗にこう言うでしょう。「とにかくたくさん在庫を持って、欠品を防ぎ、お客さんに一点でも多く買ってもらおう」と。しかし、オーナー側はそうはいきません。売れなかった分のロスの責任を取るのは、本部ではなくオーナーだからです。廃棄が多いと無駄な仕入れとして費用が増え、利益(自分の所得)が減ります。

 

この方針のすれ違いから、問題が起こります。本部SVは、発注に消極的なオーナーに代わり、自己判断で発注を始めます。これがオーナーとの信頼を崩し、今回の問題になったというのが、僕の予想です。オーナーは、フランチャイズ契約を切られてしまえば生活が一変してしまいます。ブランドネームや大手の保有する仕入れ網を使わずにコンビニを経営するのは、並大抵ではありません。きっと破産してしまうでしょう。その交渉力の弱さゆえ、オーナーは、本部の要求を受けざるを得ません。おそらく、これまでも我慢していたのでしょうが、今回の発注に関しては会社が問題視するだろうという事で、不正が発覚した、という流れだと予想します。

 

24時間営業とすれ違い

本部と店舗の方針のずれとしてもう一つ挙げられるのは、24時間営業です。最近、これは強制できなくなりました(参照記事)。売上高に見合わない光熱費や人件費、あるいはオーナーの心身疲労という面で、24時間営業を見直すべきだという意見はかなり前からありました。

 

売上高からロイヤリティを得る本部は、当然24時間営業を求めます。光熱費も人件費も、オーナー持ちなので本部には関係ありません。ところが今回、「オーナー側に不利益な場合、24時間営業の強制は本部側の強い立場を濫用する行いである」と法務省が判断し、オーナーは強制的な24時間営業から解放されました。

 

これで、24時間営業を拒否する店舗が便乗して増えれば、全店舗の売上高は減少し、本部が得られる手数料も減り、本部の業績が悪化してしまいます。よって、24時間営業をしなくても、店舗の立地が他の店舗より悪くても、安定した収益を立ててゆく事が、ファミマ含めコンビニ業界全体として必要になります。

 

ファミマは、他のコンビニと同様に今回の法務省に迅速に対処しつつ、内側の問題、つまり、これまでの戦略によって歪ませた組織全体の調整が急務になったと結論付けます。

 

 

わざわざ子会社にする理由

ところで、この環境の変化への迅速な対応には、上場企業においては課題が残ります。経営陣が環境を変化させると表明しても、その意向に株主が反対すると、判断が否決される場合があります。特に、株主は収益性を重要視し、コストを大きくかけて勝負されることを嫌います。故に、株式会社にとって、先進的・挑戦的な事業や改革を行う場合は、株式を自社で買い占めてしまうような事もあります。事実、大手アパレル企業のワールドは、MBO(経営陣による株式の買い占め)を行い、上場を廃止し、柔軟なブランド開発、迅速な意思決定を実現させています。

 

ファミリーマート株式会社の株式の4割以上は伊藤忠商事がすでに保有していました。現社長も伊藤忠出身の方です。こう見ると、ファミリーマートはもとから伊藤忠色が濃いように思えますが、半分を超えない4割の所有では、伊藤忠も会社への意見をする程度の立場に留まります。今回、経営環境の変化(法務省のお達し)や内部の統制(本部・オーナー間の問題)の解決に、伊藤忠商事が大きく舵を取ろう、という事になったのではないでしょうか。そして、会社を大きく変えてゆくためには、反対意見を抑えるために株式を伊藤忠商事へ集中させた方が良い。だから、少数株主から株式を買い占め、ファミリーマートを完全子会社にしたと考えます。

 

以上が、僕が予想するファミリーマート株式会社が伊藤忠商事に買収されるまでのストーリーです。では、買収され、上場が廃止された後、ファミリーマートはどう変わってゆくと予想されるのでしょうか。今回はここまでも文量が多くなってしまったので、それについては、別でまとめようと思います。最後になりますが、今回書いていることや、この続きとなる記事は、少しの事実を元に、あくまで僕の予想を書いたに過ぎません。このような不確かな情報で、しかも長々とした文章を読んでいただいたのなら、ありがとうございます。そして、その上楽しんで貰えたら、なお嬉しいです。

やてん

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントする