サントリーとアサヒの飲料から見る、デザインと無為転変

僕はこれまで、呪術廻戦を絡めてデザインについて考えてきました。またその中で、デザインには2種類あると仮説を立ててきました。

 

  • コンセプト主導のデザイン(無移転変デザイン)
  • 造形主導のデザイン(呪骸デザイン)

 

参照:

第1回:オシャレ・デザイン・無為転変 呪術廻戦を見て改めて思う、デザインの本質

第2回:続・魂or肉体論 呪術廻戦から深める、デザインと世界観

 

コンセプト主導のデザインとは、文章に起こされたコンセプト(あるいはヴィジョン)からデザインを生み出す手法のことです。第1回の記事で、車体のデザインなどがこれに当たると書きました。

 

一方、造形主導のデザインとは、形を先に生み出し、その形に意味を与えて、使ってゆくうちに認知を広めて常識化させてゆく手法のことです。字面からはわかりづらいかもしれませんが、企業のロゴやトイレのマークなどがこれに当たります。これは第2回で書きました。

 

今回は2つの内、コンセプト主導のデザイン(無為転変)についての話です。題にもありますが、見慣れた場所で、実はこの無為転変が用いられ、戦いが繰り広げられている、という話をします。

 

そして、コンセプト主導のデザインについて、もう一歩理解を深めてみようと思います。

 

まずは、今回題材として取り扱う商品を紹介し、それらがどんなコンセプトで生み出されたのかについて考えてゆきます。

 

訴えかけ方にも個性が光る

今回取り扱うのは飲料です。主に、お酒です。様々ある中から、アサヒとサントリーの商品を取り上げます。

 

アサヒ:思わず「ゴクリ・・」なデザイン

まず、アサヒのクリアアサヒです。

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話は逸れますが、クリアアサヒはビールではないんですね。僕はお酒を飲まない人間なので、詳しくなかったのですが・・。それでも、このビールを思い起こさせせるデザインによって、パッケージを見た人の「お楽しみ度」は、ビール並になっているのではないでしょうか。

 

パッケージを見ると、この飛び出す泡が、まるでビールが目の前に置かれているような錯覚を思い起こさせます。そのシチュエーションを思い出し、「ゴクリ・・」と思わず喉を鳴らしてしまいそうになるのでは?

 

もうひとつ、アサヒから、贅沢しぼりを挙げます。

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新鮮な果実が「ギュウゥゥゥ・・・ッ」と搾られている映像が網膜に浮かびます。こちらも、果実の甘みと酸味をついつい思い出し、勝手に唾液が出てきそうです。果実感を味わいたくなります。

 

というように、アサヒの商品には、その飲み物が目の前にあるときの状況を思い起こさせるような楽しいデザインが作られる傾向にあるようです。お酒ではありませんが、三ツ矢サイダーなども、それに当たると思います。

 

次に、サントリーのお酒について見てゆこうと思います。

 

サントリー:「あの快感」を呼び起こすデザイン

まずはサントリーの、ザ・プレミアム・モルツです。

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黄金と紺の醸し出す「プレミアム感」、これを飲んでいる姿を想像すると、良いスーツを着て、ラウンジでお酒を楽しんでいるような、そんな妄想を繰り広げたくなります。

 

もう一つ、お酒から、ストロングゼロを挙げます。

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カイジ(藤原竜也さん)ではないですが、「キンッキンに冷えた」な氷のクリエイティブ、抱えていたストレスが吹っ飛び、アルコール度数も相まって、飲んだら気持ち良くなれそうな気がしてきます。

 

お酒ではないですが、天然水のパッケージも、「天然」を推すというよりも、ミネラルウォーターを飲むことで「ひんやり気持ちよくなりたい」という感情へ訴えかけているようにみえます。

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このようにサントリーのデザインは、それを飲んでいる、あるいは飲んだ後に感じる愉悦や心地よさを記憶から呼び起こさせるデザインを作る傾向にあります。

 

以上が、今回僕が感じた、商品同士の「コンセプトの戦い」です。サッポロやキリンについて述べない理由は、最後に記します。

 

次は、この「コンセプトの戦い」について、それがどのように行われているのか、その内訳を整理してゆきます。

 



 

焦点は、「顧客の何と共鳴させるのか」。STP→C→D?

上の例で述べた「コンセプトの戦い」は、以下の二点に要約できると考えます。

 

  • 両社のデザインは、「どんな感情に訴えかけるか」という点で異なる
  • 両社が訴えかけたいその感情は、時系列、つまり、「飲む前か、飲んだ後か」で分類できる

 

具体的に言うと、アサヒのデザインは、「飲む前」の「お楽しみ感」を思い起こさせようとする一方、サントリーのデザインは、「飲んだ後」の爽快感を思い起こさせようとしていると考えられます。

 

このように整理してみると、この分類は以前の記事で述べた「ポジショニング」の話ではありませんか。

 

どちらが先に仕掛け、それにどちらが応じたのかまでは調べまていませんが、つまるところ、下記のような感じではないでしょうか。

 

まず、どちらかが、顧客の何に訴えかけるのかについて軸を取り、ポジショニングにおいて自社を位置づける座標を見つけ出して、コンセプトを生み出し、それに沿ったデザインを作り、売り始めた。

 

するともう一方は、その商品に対抗し、先手と逆の向きに特化をし、顧客の違う感情に訴えかける座標へ自社の商品を位置づけ直した。

 

この流れで考えれば、両社の「コンセプトの戦い」に、筋が通ったストーリーが生まれます。

 

つまり、コンセプト主導のデザイン(無為転変)は、STP(ブランディング・マーケティングにおける仕事の流れ)のさらに下流に位置するものだったのです。

 

これを整理すると、STPCDとでも整理し直せるのでしょうか。

  1. S:セグメンテーション(市場細分化)
  2. T:ターゲティング(標的市場選択)
  3. P:ポジショニング(顧客の中でのイメージ棲み分け)
  4. C:コンセプトメイキング(商品案作成)
  5. D:デザイン(コンセプト主導にデザインを作成)

 

こう思うと、なぜ僕が呪術廻戦における「魂・肉体論」に関心を寄せていたのかも納得できます。

 

「魂・肉体論」とデザイン。この二つをつなぎ合わせると、マーケティングに行き着くのです。改めて、僕は顧客心理や購買行動について考えるのが好きなのだと感じました。

 

コンセプト主導のデザイン(無為転変)は、先手ではなく応じ手であった

これまでは、両社が「飲む際の時系列」で顧客の感情を分類してコンセプトを作り出し、それぞれに共鳴する商品のパッケージをデザインした、と考えてきました。

 

最後に、「コンセプトの戦い」を、顧客、競合、自社の関係性から考えてみようと思います。

 

「コンセプトの戦い」の内、この記事で注目しているP→C→Dから考えるに、コンセプトがポジショニングから生まれてくる以上、コンセプトは競合の立ち位置によって決まってくると言えます。

 

また、無為転変について考える上で重要なのは「リデザイン」、つまり、魂(コンセプト)を変えることで、肉体(デザイン)を変えることでした。

 

リデザインにおいて真価を発揮する無為転変は、実は相手に対して「先手を打つ」ことよりも、相手の出方に対して「応じ手を打つ」ことに大きな意味を持つと考えられます。

 

思えば、呪術廻戦の作中において真人は、戦う相手と状況に応じて自身の肉体を変えながら戦っていました。必ずしも自分のやりたいように戦っているわけではなかったのです。

 

つまり、無為転変は、顧客、自社、競合の制約が揃って初めて真価を発揮するデザイン手法なのかもしれない、と考えられます。

 

そうすると、僕の考えてきた、冒頭に書いたデザインの二分法も、修正を必要とします。

 

応じ手(顧客、競合、自社の関係性から導かれる手)を無為転変と定義すると、顧客(潜在的な)と自社の関係性のみからコンセプトとデザインを起こしてゆく、起業家的構想に当たるデザインとは、どのようなものなのでしょうか。

 

そのデザインは、「コンセプトの戦い」のフレームワークであるSTPCDのうち、上流のSとTの話になってくる気がします。

 

・・・と、新たな問が生まれたところで、今回は終わりにします。今後は、この新たな問について考えることを楽しみに過ごしてゆこうと思います。

 

番外編:なぜ、キリン、サッポロ、エビスを対象から外したか

3社の共通点を考えてみればおわかりかもしれませんが・・

 

この3社は、自社のシンボル、つまり、円の中の五芒星(サッポロ)と、麒麟(キリン)、恵比寿様(エビス)をパッケージに採用しています。

 

戦い方として、商品コンセプトで戦っているというより、コーポレートデザイン(つまり、造形主導)で戦っているといえます。

 

よって、応じ手であるコンセプト主導(無為転変)というよりも、我が道を行く戦い方をしているように思われた3社を、今回は対象から外しました。

 

 

制作:ゆるリサーチ

 

制作:メディアに学ぶ

提供:あたまのなかのユニバース

 




やてん

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