角瓶ウィスキー、ハイボールの差別化と立体商標の威力
久しぶりに、マーケティングチックな話をしようかと思います。年明け、大学時代の友人と焼肉に行ったとき、酒に弱い自分でもハイボールならなんとか飲めることに気がつきました。僕自身は酒にも弱く、飲んだハイボールの味には興味ありません。ビールの味もメーカーごとに違おうがどうでも良いと思う人種です。
それでも、サントリーのウィスキーの角瓶が他の瓶と並んでいると、目立って見えます。形が特徴的だからです。以前、シャープペンシルのオレンズをマーケティング分析した記事で「商品の性格が伝わるパッケージは顧客に選ぶことを迷わせない」と紹介しましたが、サントリーの角瓶のウイスキーには、別の意味で迷わせない感じが漂っていると感じました。
ここでちょっと想像してほしいのですが、例えば、みなさんが、パーティー用のお菓子を選ぶとします。お菓子の棚の前に行きましたが、どれも似たようなホイル調のパッケージで、何がどこにあるかもわかりづらいですし、どれも似ており、しかも数が多いので何を買うのかも迷うと思います。
ビールに関しても、関心が高い方は自分のこだわりや、パーティーへみえる方のこだわりをご存知の方かと思いますが、興味が薄い人は、ビールの品を選ぶのにも苦労します。ちなみに、僕は苦労します笑
そんな中、ハイボールに関して考えると、角ハイボールのパッケージがウイスキー瓶のイメージとも合間って、選びやすいですし、ウィスキー自体も、あの目立つ瓶の形状が棚で主張してくれます。まぁ、ウィスキーは他も「山崎」とか「白州」とか、特徴的な名前を持っているので印象に残りやすいのですが。
この角瓶、実は「立体商標登録」というものがなされており、真似されることが禁止されています。単に印刷物に印される平面の「商標登録」はこの世にたくさんありますが、角瓶のような立体物に関しては、特別に「立体商標」としての登録もできます。この登録要件として、以下の二つを満たす必要があります。
- 「商品形態自体に自他識別機能がある」
- 「商品が当然に備えている立体形状でない場合」
上に関しては、角瓶の瓶の形状自体が、「サントリーのウィスキーである」と認識するのに役立っているかどうかが問われます。そして②では、「飲み物を入れる容器」以外の表現がその立体によって成されているかが問われます。
これらはかなり厳しい条件で、登録されているものの名をあげると、みなさんの頭の中でその形状がイメージできるほどだと思います。
コカコーラの瓶の形状であったり、ヤクルトの容器であったり。これほどのパワーを持つのが、立体商標なのですが、角ハイボールに関して、コーラと比べてもすごいのが、缶商品のハイボールにも元々のウィスキーのデザインを応用しているところです。そして名前にも「角瓶」からとった「角」が使われ、「角ハイボール」と呼ばれるほどの徹底ぶりです。
僕は上述の通り、酒には興味がなく、缶の酒はデザインで選びますが、ハイボール飲むとしたらやっぱりサントリーの缶を選んでしまいます。お菓子には悩んだのに、悩まずにハイボールを選んでいて、それでハッとして、記事を書くに至っているので笑
缶を見ても、なんとなく、あの瓶のイメージが頭から離れていないのです。立体商標は、そのイメージを他に転用しても強いブランド力があるのだと感じた経験でした。
今回思ったことがあるのですが、同じ形態(いわゆるホイル調のプラ袋)で売り場だーっと並ばせてしまうより、異なる形状にして、パッケージを変えてみてはどうかということです。その形状が、その商品を表すものと判断されば、パッケージに載せる文言を考えなくても良くなるし、関連商品にそのデザインを応用させることも可能です。
そうすれば、僕のような「関心がない顧客層」にも目に止めてもらえ、それを選んでもらえるようになると思うのです。以前の記事で述べたヨーグルトのように、名前だけではヨーグルトが「ブルガリア伝統の味」と判断してもらえず、こだわりを持っていることに気がついてはもらえないようなものは、結構多いと思います。
そこで、ブルガリアの伝統、「素焼き鉢」に似たイメージを連想させるようなパッケージにすることが可能になれば、他との識別も可能になりますし、素焼き鉢の形状に興味を持ってもらい、さらに、ブルガリアへのこだわりも理解されやすくなると思うのです。
立体商標とは、それくらいパワーがあるのもだと思います。新商品の開発だけでなく、似たもので溢れかえってしまっている売り場に目を向け直し、自社の商品の特徴をもっと尖らせるデザインのアイデアを出すことも重要ではないかと、ハイボールのデザインを見て飲みながら感じました。
制作:ゆるリサーチ
提供:あたまのなかのユニバース