グローバル知財フォーラム2019に参加してきました。知財とコミュニティ

1月末に、品川で行われた「グローバル知財フォーラム2019」に参加してきました。知財とは知的財産の略で、特許などの「物」ではなく、「知恵」の財産のことです。知財に関しては個人的には下町ロケットで興味を持ちました。そして何の縁か、診断士でも日々学んでいます。

 

下町ロケットでは、知財(特許)は喧嘩に使われていますし、コンサルの事例の中では、知財の細かいところは弁理士に任せてしまうことが多くて、生の情報は現場の人の話を聞く以外にはなかなか知れないところです。そんな時に経産省のメルマガで「こんなのやるよ」と書かれていたので、参加してみました。無料で参加できたのですが、無料とは思えない深い話が聞けて非常に勉強になりました。

 

今回は、「グローバル知財フォーラム2019」に参加してきて感じたことを整理しておきます。ポイントとしては三つありますので、それについては以下に記します。

①業務の改善から特許に発展することもある

②中小企業やベンチャー企業が海外と提携するならば、特許は必須

③法律的な意味での「知財」とそうでない「知財」の考え方

 

業務の改善が特許になる

まず、一つ目ですが、これが僕としては意外でした。下町ロケットもそうですし、コンサルの事例においても、特許とは、製品を作る前からその製品に関して特許を申請すると決めていることがほとんどでした。ですから、「業務の改善を行ってゆく中で自然に特許ができていた」と言う、目的のないところにも知財が生まれることがあることは、新たな気づきになりました。

 

例えば、武州工業株式会社のIoT、AIを利用した製造POSシステムは、製造工程で起こる不良品検査基準のばらつきを無くし、客先との関係を良好に維持するために開発したものだとのことです。現在はこのシステム自体が特許になっており、パイプ製造と並行して販売を行っているそうですが、自社内の改善が商品化するというボトムアップ的な特許の活用として、なかなか出会えない良い例です。こういう例があるとわかっているかどうかで、社内での業務改善へのモチベーションは変わってくると思います。

 

業務改善から生まれた特許の例としてもう一社例をあげると、株式会社 FUKUDAの潤滑油(車のエンジンオイルみたいなやつ)販売システムの「IBCローリーサービス」があります。もともとはオイルの納品を行っている卸の会社でしたが、オイルの需要を正確に予測するためのオイル残量検知システムをIoTを利用して生み出しています。残量検知に関しては液体全般に使えるとのことで、このシステムもいつの間にかの特許だそうです。

 

この二社の共通点は、システムを自前で開発したことと、そのシステムを開発する前段階での業務の洗い出しがしっかり行えていたことが挙げられます。前者に関しても素晴らしい(時間は数年スパンでかかっているらしいが)ですが、注目すべきは後者だと思います。

 

システム開発に関してはSEの友人に現場の話を聞かせてもらえるのですが、コミュニケーションの誤差があるせいで思うように受注者の求めているものを作れないと話しています。そう言う事情を聞くと、自社で完結させたのは理にかなっていますが、言う程簡単ではありません。武州ではエンジニアを雇って、3年ラインで働いてもらい、コツを掴んだところでシステム開発に着手したそうです。3年間、そのシステムを開発するために社員に現場をわかってもらう、と言う手を打てる胆力のある経営者はなかなかみえないでしょう。会社の内側の企業風土・文化に関しても、素晴らしかったからだろうと感じました。



海外と提携するなら特許は必須

次のポイントは「グローバル知財フォーラム」っぽいポイントです。どうやら、海外と提携して製品を売ってゆくためには、知財は必須のようです。提携や出資をしてもらう段階で、デューデリジェンス(詳細調査)を行うのですが、その中の「リーガルデューデリジェンス」というものがあり、それには特許に対する調査も行われるそうです。

 

これに関しては、特許の数だけでなく、特許を表す文面の穴をかいくぐられることはないか?とか、製品のライフサイクル上、市場がちゃんと伸びてゆき、お金へ変換できそうか?など、かなり突っ込んだところまで聞かれるそうです。「中小企業やベンチャーにとっては、知財がそのまま企業価値のようなもの」と、海外に出られているかたは皆言います。それくらいシビアで、強い知財がなければ海外では戦ってゆけないというお話は、言い換えると「特許がない会社は、日本の市場が小さくなったとき、大丈夫なのか?」とも言えると思います。

 

日本は人口が減少し、少子高齢化社会を迎えています。そのため、課題先進国とも言われています。今後、国内市場が小さくなったときに、海外へビジネスを展開してゆく会社が増える可能性があり、その中で戦ってゆくには知財戦略が必須なのであれば、今、変わらなければならないのではないかと感じました。僕は職を色々探していますが、「今は目立たないけど今後10数年で伸びるであろう会社」を探しています。そういった会社は未来への投資を行うことが上手なのですが、僕の転職の軸は時代性からして間違っていなさそうだと感じました。

 

広義の「知財」、狭義の「知財」

最後に、このお話をしておこうと思います。このお話は二日かけて行われたこのフォーラムの最終公演でお話しされていたことです。端的に言うと、「日本はコミュニティ意識が低い」と言う話でした。

 

実際、これまでの話では「知財は法律で他の会社から技術を守ってくれる盾」と言う表現がほとんどでした。また、人によっては、知財を、知的財産権と、ノウハウなどの営業秘密との二つがあり、作業のコツなど、ノウハウに関してはあえて非公開にすることも戦略の内だ、と言うことが話されていました。

 

なるほど、これが特許戦略か、と思っていたのですが、どうもこの捉え方は狭いようで、実際の知的財産はこんな感じに分類できるとお話してくださいました。

実際には知財は、「知的財産権」「営業秘密・ノウハウなど言葉にされない情報」、そして「その会社、人が所属するコミュニティ」の三つがあるそうです。

 

このコミュニティと言うのは、会社もその一つですが、それ以外にもたくさんあります。議題で上がっていたのは「ベンチャーカフェ」でした。こう言う「こう言うことやりたい」「だったら力貸すよ」と言うように緩くいろんな人と繋がれる場所をたくさん持っておくこと、その繋がりも「知財」だと言われました。実際、巷で話題のGAFAの成功は、濃いコミュニティが現シリコンバレーで互いに協力し合うことで生まれた特殊な環境(エコシステム)に起因すると言われています。

 

一方、日本の会社はどこも閉塞的で、互いに猜疑心を向け合います。社内を案内するときには「秘密保持契約(NDA)」を締結しなければならない、など、違いを信用しません。しかし、これでは互いに協力しあうこともありません。

 

元をたどれば、アメリカと日本の歴史に原因があるかも、とも言われていました。アメリカは開拓・移動の文化で、日本は村の文化だと。しかし、京都の一見さんお断りの文化ではありませんが、これから何かを起こそうとしている企業や人が集まってきているコミュニティで、いきなり「秘密保持契約かわしてくれないと話せません」とか言ったら、一見さんの段階で弾かれ奥間までは通れません。しかし、イノベーションが起こるのは奥間です。

奥間の深い関係性に入って、互いに協力しあって発展してゆくためには、二つ目の画像で示したように、特許などの知的財産権と、コミュニティと言う知的財産を別のものとして、柔軟に考えなければならないのではとお話ししておりました。

 

僕自身も二日間のフォーラムの中で、「小さな巨人になるためには知財権とノウハウの戦略が大事なんだ」と思っていましたが、最後の最後でもっと広く考えなければならないのだと感じさせてくれたお話で、聞けてよかったと感じています。

 

僕が入社しようと考えている会社も、10人〜20人くらいの会社です。ここ数年でできた会社ですので、やはり時代を理解しており、コミュニティを大事にしている会社です。会社で働き始めても、コンサルとしても、会社の成長のために「コミュニティ」の知財をうまく活用してゆく力は必要でしょうし、それら駆使できる人間になってゆこう、と思いました。

 

制作:ゆるリサーチ

提供:あたまのなかのユニバース

 




 

 

やてん

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