衣料品・アパレル業界の低迷の打開策とは

結構前から、洋服好きにとっては寂しさを感じる内容の記事を良く見かけていましたが、年々、衣料品・アパレル業界への風当たりは強くなっていると感じます。一番最近見かけた記事はこれです。

 

2018年上期振るわなかった衣料品販売(経産省METIジャーナルより:https://meti-journal.jp/p/3804/

 

この記事や他の様々な記事で見られるように、衣料品業界は責めを受けています。特に上の記事で問題視されているのは百貨店の売り上げ減少です。僕個人は百貨店が好きですので、アパレル業界の不振の原因を百貨店が一手に受けることが心苦しい気持ちです。

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確かに、百貨店の売り上げは下げ幅が大きい

 

実際、このグラフを出典している記事で見られるように、百貨店は徐々に利用する年齢層が上がってきており、先細りになってゆく可能性が見えています。

 

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60際以上は半分近くになる。この層がお金を使わなくなると、いよいよ百貨店は立ち行かなくなるのではないか

 

百貨店での購入が特に減っているのは20〜30代です。働き盛りで買いに行く時間がないことも考えられますが、それ以外にも理由を2つ挙げます。一つは子育ての費用捻出です。以前にも増して、子供を育てることは大変になっているという話を聞きます。

 

もう一つは、初めの購入先別棒グラフが関係していると思われます。項目のうち、百貨店などが減る一方、「ネット通販」「ディスカウントストア・量販専門店」が伸びていることがわかります。おそらく、2004年から10年以内に成長してきたファストファッションやアウトレットへ20〜30代の人たちの消費がシフトしていったのだと考えられます。「ディスカウントストア・量販専門店」が伸びているのはそのためでしょう。実際、ユニクロの業績はここ数年も堅調です。

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ユニクロの業績。

 

ここまできて、「ああ、やっぱり服好きは減ったのか、悲しいかな」で終わっては、他のサイトで掲載されている記事と同様寂しくなってしまうので、今回は、もう少しこの不振を掘り下げてみようと思います。また、個人的にですが解決策を提示してみようと思います。まず、百貨店での消費がファストファッションやアウトレット、ネットショップ(長いので、以後3つを合わせて「簡易購入」と略します)へシフトした経緯を考えてみようと思います。

 

不振の理由①ユニクロの質が向上した

これには大きな二つの理由があると思います。まず一つ目が、「簡易購入」の中でもファストファッションの成長です。2004年現在、ユニクロなどファストファッションは今ほど洗練されてはいませんでした。ですから、服を選ぶ際の消費者のイメージでは、下のような感じです。

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当時、消費者は安さだけを求めて「ユニクロだから仕方がない」と言いながら服を買っていた。

しかし、ヒートテックは発達し、カシミアのニットセーターやカシミアウールのコートが売られるようになり、シンプルで洗練されたデザインへ統一もされてきて、人々はユニクロなどのファッションをダサいとか質が悪いとも思わなくなってきました。消費者のイメージでいうと、こんな感じに。

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青い部分(価格だけを気にする期待のなさ)が減ってきており、ファストファッションは質に関しても期待されるようになってきた。

 

そんな感じで、ファストファッションの役割は年々大きくなってゆき、百貨店の消費は抑えられていったと考えられます。これが先に挙げたユニクロの業績にも繋がっていることは間違いありません。

 

不振の理由その②消費の集約

百貨店の不振のもう一つの理由は「消費の集約」だと思われます。前職の上司と服の話をしていたときに、あまりに多趣味な方だったので、その旨を伝えると「僕だけでなく、あの頃はみんなたくさん趣味を持っていて、やれスキーやアウトドアっていろんなものにお金を使ったんだよ」と教えてくれました。

 

当時は、なんでも手を出してみんなして遊んじゃう文化だったと言います。物価も安く、かつ賃金も上昇傾向にあったのでたくさん物を買えたが、今はそうじゃないから、とのことです。逆に、同世代の僕の父は公務員でしたが、公務員は当時っは地味で人気がなく、今の様に目指される職ではなかったそうです(官僚っは別かも)。給料も民間に比べて安く、生活も質素倹約だったと言います。就職はしやすかったけど、今は逆で、今の時代だったら自分は入れなかったかも、と話していました。

 

僕はここに消費の集約のヒントがあると思っています。バブル崩壊以降、ずっと消費も賃金も下がってきており、逆に物価は上がる一方です。消費の選択肢は多様であるにも関わらず、使えるお金は限られます。よって今の若年層は、自分を表現するために適した趣味を数個持ち、それにまとまった投資をすることで他とは違う「自分らしさ」を確立するのではないでしょうか。それが、カメラ(特にスマートフォンがキャズムを超えたあたりから流行り始めた)やグルメやパソコン、ゲーム(課金なども)、音楽もそうなのだと思います。

 

そうすると、服を一番に持ってくる人が減るのは当然と言えたかもしれません。なぜなら、カメラなどに比べて、ファッションは上達の度合いをチェックするのが難しいしからです。また、1着だけ良いものを買ってもバランスが悪く、うまく使えません。組み合わせるのに数アイテム必要です。さらに、買い替えの頻度も他の趣味に比べて早いです(もちろん、マッキントッシュのコートのような20年着られるとされるコートもありますし、良い革靴は30年履けると言われています。)。

 

しかし、徐々に発達し始めたファストファッションが、ある程度の清潔感やオシャレ感を演出させてくれるようになってしまっては、百貨店のような「こだわりのある洋服」をうるお店から、若い人たちが離れていくのも理解できます。

 

 

今後の百貨店がとる戦略は?

原因を特定したとして、衣料品、アパレル業界、そして百貨店が、今後再生するためにはどんな対策が考えられるか、ということをまとめてゆきます。

 

コンサルの立場としてセオリーでいけば、購入者のうち半数近くが高齢者ということなので、高齢者をターゲットに各種マーケティング戦略を整備することも重要です。しかし、冒頭で触れた通り、それでは未来がありません。若い人に対しても、百貨店の良さに気づいてもらう必要があると思います。

 

まず前提として、変えようのないものがあります。それは、賃金の伸び悩みと物価の上昇です。つまり、趣味は今後も集約し続けます。子持ちの親が増え始める30代は特に伸び悩むと思われます。そんな中で売り込みをしなければならないので、洋服は洋服だけでなく、他の趣味とも競合するのです。

 

考えるのは、洋服を買わない若者が、他の何にお金を使うのかです。ここで、「転職の思考法」に関してまとめた記事で引用したように、日本人の90パーセントはbeing型であると言うことが関係すると思います。being型とは、趣味に対して、何を差し置いても「これをやりたい」と思っているのではなく、「こうありたい、こうみられたい」と言う考えに基づいて選ぶタイプのことをと言います。「こうありたい」という欲求には、「誰々と、みんなと比べて」という枕詞が隠れています。つまり、「周囲と比べて自分はこうだ」という特徴をみんな求めているのです。また、それをわかって欲しいがっている。

 

改めて、服でその欲求を解消するのは難しいですよね。2万のカシミアのセーターと1万しないユニクロのカシミアのセーターを見分けるには、それなりに服に触れ合わなければなりません。ZOZOが体格に合わせた服を作ることに成功した(僕も買いました!レビュー記事をご覧ください!)現在、服の差は生地や縫製の差になってきます。細かな縫製や、使っている生地、色の入り方は、感度が低い人には理解されません。わかってもらえないなら、わかってもらえる趣味に投資するはずです。カメラとか、車とか。

 

今後、ZOZOのようなECショップの売り上げも増えてゆきそうな中、それでも三陽商会やオンワードなどの百貨店の帝王たちが若者に愛されるようなものであって欲しい。ここでまたまたセオリーならば、ブランドコンセプトの明確化・確立・刷新とかだと思いますが、それはトヨタが車種を半減させることから見て得策ではないと気がつくべきです。最近香川照之さんがCMで言っている様に、トヨタも自動車メーカーという立ち位置から変わりつつあります。

 

では、ブランドや商品自体で競争を見ずに、何で競争を見るかというと、顧客のタイムテーブルで考えます。洋服と、それを楽しむ時間を、顧客のタイムテーブルの中に入れてももらう。そのために、今まで他のことに使っている時間を、どのようにシフトしてもらうか。時間ベースの競争を制さなければ、インパクトは生まれないと思います。

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上の画像から、青と被らないところだけ切り抜いた部分。百貨店の顧客はここにいる人たち。

時間ベース考えると、洋服を買うには、良い服を買う意味や、着飾っていく場所を作る必要があると思います。例えば、ポールスミスの常連のお客さん同士がいっぱい集まるイベントで、ポールスミス御本人登場、みたいなイベントです。こういう違いを認め合える場所は、ユーザーに「着てゆきたい、着たい」と言うモチベーションを与えてくれると思います。そういう場所に集まってくる人は、上の赤の三日月の範囲に属するモノの良さをわかってくれる人達です。その人達に「やっぱ、服って良いよね」と確認し合えるような場所の提供が今後の鍵になってゆくのだと感じます。

 

そう言う文化を、小さくても作ってゆく必要があるのではないかと思います。靴には根強くビスポーク会という文化があります。コルテと言うフランス靴のメーカーは、一年に一回だったか、ブランド立ち上げたピエール・コルテ本人がコルテ青山店に来てビスポークの計測、フィッティングをしてくれるそうです。そんな文化を、洋服に関してもぜひ醸成してもらいたいと希望します。ブランドの分類とか、コンセプトの明確化よりも、もう少し大きいところで考えてゆこう。

 

前編・後編にしようかと思いましたが、今回は一気にまとめた方が良いと思ってこんな感じにしました。もし最後まで読んでくださった方がいらっしゃるなら、本当にありがとうございます。

 

 

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やてん

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