農水省で行われた「肥料取締制度に係る意見交換会」の議論内容を整理してみた。

堆肥混合複合肥料、5割堆肥じゃ足らない?

まずは、肥料に関する課題でも挙がった、混合の比率の課題です。現状、堆肥混合複合肥料は、混合が可能な堆肥の割合を50%までと制限しています。

肥料は、だいたい1ha(100m×100m)あたりに1tくらい入れます。その半分が堆肥だとすると、500kgです。先ほど個人的な見解をお話しした通り、だいたい土壌診断で出た結果に対して、1haの10分の1の面積に、堆肥は2tくらい入れたいところです。つまり、理想に対しては圧倒的に不足しています。

では足りるような量にできるか?という話ですが、割合を変更しても足りません。ただし、この「2t入れる」という提案は、土壌を一定の水準まで軽くするために入れる量の水準で、実際この結果が出たからといって、僕も「2t入れましょう」とは言いません笑 これに関しては長期的にみるべき問題という事です。

堆肥などの有機物は、植物が吸収できる形になるまで分解されるのに時間がかかります。逆に言えば、土壌に残ってくれる養分ということです。成分当たりの価格が化成肥料よりも安いのであれば(これについては後ほど言及します)、多めに入れて、今後のために地力として蓄える、という使い方もできるのです。

そのため、混合堆肥複合肥料の割合に関しては、各メーカー、卸の方からも求められているようですし、農水省の制度も、要求に合わせてゆく可能性が高いと感じました。堆肥の比率が今の50%より高くなれば、より早く、土壌の地力を高めることができますので。

原料に使う堆肥の水分を一定にするための設備投資

肥料に関する課題整理のなかで軽く触れたのですが、どうも混合肥料に使う堆肥は水分を減らす必要があることが多いそうなのです。ただでさえ、畜産を行う場所でしか作られない堆肥ですが、その地域によっても、処理方法などが違うせいで、水分率などにばらつきがあるというのです。県内においてもそうだそうですが、全国で見ても、北から南まで物理的に離れているせいで、質にばらつきがあるのは避けられません。

そんな中で原料を調達せざるを得ないのだから、割合を50%以上に増やすことを念頭に考えるならば、利用可能な堆肥をたくさん生産できる必要があり、そのためには、二つのことが必要です。

(1)堆肥供給者に画一の生産ルールが必要

(2)水分が多い堆肥を乾燥させるための設備導入に関して、補助が必要

堆肥を作る際に、その保存などに関してルールが定まっていないと、均質にするのが難しくなります。ただでさえ、堆肥とは自然発生するようなもので、均質にするのは難しいのですから、せめてそれ以外は統一が必要です。

また、水分は、だいたい「悪い堆肥」に関しては50%ほどあるのだそうですが、本来肥料と混合させるには最低でも40%くらいまでには落とさなければならないらしく、それを大量に行うとすると、大規模な施設が必要だそうです。

当然、これを導入するには、生半可な財務体力では敵いません。もしメーカーにこれを任せると、機械の導入に対して堆肥の値段も上がり、輸入してくる化成肥料の方が安くなってしまいます。そこで、国からの補助を各生産業者は求めているようです。

大丈夫?土壌に予算が回らない、回せない

最後に、疑問として提言されていたことをご紹介します。現在「下町ロケット ゴースト」が放送しています。多くの人に、無人トラクターの魅力が写っていることでしょう。無人操作技術など、農業生産において、ITを取り入れてゆくという方針は、実際その通りになっていますし、盛り上がるその産業に、国の予算が集まってきています。

これを、ある委員の方は「空中戦」と題しており、全く上手な言葉だと納得しましたが、土壌に関しての調査は、実はもう、予算的にも国ではあまり行われていないのです。民間の(僕のような)人間が個々に土壌診断をし、個々に問題に対処しています。各個人の手の中にしかデータがないのです。

その方は、国はそれら個々の情報をまとめてゆく必要があると同時に、自身も意識を土壌の調査へ向け、それを国民全体に啓発してゆく必要があるのではないかと話していました。そして、「確かに、農業ICTは魅力ある産業です。しかし、その農業は、土でするものです。であれば、土壌に対して、もっと注意を向けるべきではないか?」と話が締めくくられました。

次回もまとめてゆきます

この「肥料取締制度に係る意見交換会」は全3回に分けて行われます。今回は1回目でした。2回目もまた参加してこようと思います。その際、また整理をしようと思いますので、よかったらご覧ください。

堆肥、というか有機物の投入には個人的にも重要だと思います。これは書き始めるとまた長くなりますので、またの機会に。

追記:意見交換会の第二回に関してまとめました。こちらもご覧ください。

1 2 3

やてん

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする

テキストのコピーはできません。