収量は、物理性改善でもまだ上がる 土壌医の会、土作り推進フォーラムのシンポジウムに参加して

本日、土作り推進フォーラムに参加してきました。また、11月30日に行われた土壌医の会(こちらは欠席し、資料だけが家に送られてきた)の資料を読みました。これらの会は土壌医の資格保持者が集まって、土壌学に関して研究されている方の話を聞いたり、意見交換をしたりする会です。

昨今、農業にもIoTが普及し始め、「スマート農業」などと言われていますが、これは以前の記事でも触れた通り、半ば空中戦であります。空中戦と感じる理由として、「ITの使いどころをわかっていない」ことが挙げられます。農業経営のどこに使うことが経営改善になるのか。同じコストで時間短縮が可能になるのか。あるいは、システム管理のコストが増えても、より収量・収入が上がるのか。そういった感度分析が、まだまだ農業現場では十分なされていないのです。ITとて道具ですので、その使い方に慣れるまでに時間が必要なのは、スポーツと同じでしょう。

その一方、昨今のIT業界の成長に押され、国はスマート農業の強化に勤めています。もう少し、地に足付いてきてからでもいいのでは?という懸念を感じていますが、そこは、お偉方の「仕事しているアピール」など、色々思惑があるのだと思います。おそらく使い所もわからず、ITに農業経営が振り回されることが数年続くでしょう。

さて、そんなIT業界の熱とは打って変わって、土壌医の会は、現状出来得る改善策などが淡々と語られます。今回その中で感じたことが、「物理性の改善でまだまだ収量は増える」ということでした。

土壌改良の基本

基本的に土壌改良においては、大きく「物理性」「化学性」「生物性」の3つの方向から見てゆきます。「物理性」とは、土のフカフカさ、水はけの良さなどです。「化学性」は、土壌中の養分の量やそれらのバランスおことです。そして「生物性」は、主に微生物に関して話されますが、ミミズなど、土壌中に存在する生物の多様性のことです。

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土壌医の試験では土壌の化学性と肥料の分類に関して高い点数配分で出題されますし、現在ようやく一般的にも普及してきた土壌分析に関しても、化学性の分析に主眼を置いています。僕自身、土壌分析の際は物理性において重視してきたのは仮比重(土の軽さ)のみで、ほとんどは化学性の改善のみを行ってきました。

土壌分析が広がってきて、化学性の改善で成果が出てきて、逆に化学性改善による増収が頭打ちになりつつありますが、今よりずっと昔からある「農家の知恵」への回帰で、まだまだ収量は改善されると、今回感じました。今回は、紹介された二例のうち、一例をまとめようと思います。

新潟県、深耕により収量アップを実現

深く耕せば、根が下まで伸びることは想像しやすいと思います。深く伸びれば、その伸びた根から細かい根もたくさん生えます。すると、水をたくさん吸収できるようになります。するとどうなるかというと、イネは日光が照るときや高温のとき、気孔(葉に存在。呼吸をする口のようなもの)から体内の水分を出し、その気化熱によって葉の温度を下げます。

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左が、深耕(15センチ)した水田で、右が普段通り(10センチ)の水田です。色が赤に近いほど、高温です。左が1.5℃ほど低いです。

一方植物は、体内の水分を気孔から出すことで体内の吸水力を上げ(汗をかくと喉が渇く感じ)、その吸水力を使って新たな水を土壌から吸い上げます(詳しい仕組みは、「水ポテンシャル」「浸透圧」などで検索してみてください。)。その際、根が十分に張られていれば多くの水を吸収出来ます。昨今の酷暑でもそれは言えて、仮に前代未聞の酷暑になっても、蒸散と吸水の新陳代謝が良ければ、葉温は上がりにくくなるのです。

葉の温度が低いと何が良いのかというと、葉の中で光合成によって作られた糖が、稲穂へ向かいやすくなるのです。光合成で作られた糖は、呼吸に使われたり、新たな体づくりに使われたりもします。どちらかというと高温になると、呼吸や体づくりに使われやすくなり、逆に低温の場合だと、糖は稲穂へ向かいやすくなるのです。

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一番上が深耕した水田。登熟歩合(穂に糖が詰まっている程度)が高いのがわかるだろう。

日中に葉温が低ければ(蒸散の水分の気化熱で下がれば)、夜に葉から穂へ養分は転流され易くなります(糖転流は基本夜に行われる。)。つまり、十分な登熟のために、十分な蒸散が必要で、十分な蒸散のために、十分な根の張りが必要で、十分な根の張りのために、十分に深く畑を耕やす。今より深く畑を耕やすという改善だけでも、イネの収量は上げられるのです。

ロータリーを深耕用のロータリーへ交換するだけでこの収量改善が可能で、環境の変化にも強いイネを育てられると思えば、おざなりにされていたのが不思議なくらい簡単なことだと思います。また、その栽培全体を通して、燃料費が高くなることもなかったそうです。

今回の植物体内の話(こういう仕組みに関する学問を植物生理と言う。僕が大好きな学問です。)は、どの植物にも当てはまることです。つまり、トマトの収量を上げたいにしても、土壌を深耕することで、根の張りを良くし、収量を改善させることが可能と考えられます。

深耕ロータリーが簡単に手に入る、と言う方で、まだご存知ない方は、ぜひ試してみてほしいです。

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やてん

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