農業の輸出戦略とバリューチェーンのテーラード オイシックス・ラ・大地、日本農業の話を聞いて

こんにちは、やてんです。本日は株式会社オイシックス・ラ・大地の海外事業執行役員の高橋大就さんと、株式会社日本農業の内藤祥平さんのお話を伺ってきました。オイシックス、日本農業に関する説明は下に記載します。

 

オイシックス・ラ・大地

有機野菜など、全国に点在するこだわりの野菜を集約し、毎週詰めてお届けする、「オイシックス」というサービスを行なっている。他、「らでぃっしゅぼーや」、「大地を守る会」などで、オイシックス同様に、異なるターゲットへ向けて野菜の提供を行なっている。今回は、執行役員の高橋大就さんが話してくださった。

オイシックス・ラ・大地 ホームページ:https://www.oisixradaichi.co.jp
オイシックス「お試しセット」

株式会社日本農業

オイシックス・ラ・大地からの出資を受け、青森、長野のリンゴの輸出を手がけている。テーマとして、ビジネスモデルのテーラリングを挙げており、バリューチェーンの上流から下流まで日本の既存のビジネスモデルを輸出用に変えている。今回は代表の内藤祥平さんがお話ししてくださいました。

株式会社日本農業 ホームページ:http://nihon-agri.com

 

さすが、輸出に精通されている

まず、高橋さんですが、さすが、元外務省の方なだけあって、輸出など国際経済に精通していることを伺わせます。実際に輸出の利得分配や関税・非関税障壁で輸出ビジネスを説明される方にお会いしたのは初めてで、まず、その時点で圧巻でした。

 

また、市場を「胃袋」という面から見て、「日本で食産業を続けることはリスクが高い」、という話は、共感しかありません。また、日本の官庁で言われる輸出政策の目標を「非常に狭い視野で話をしている」とおっしゃるその理由にも、納得です。ただ、高橋さん本人が話す輸出策にも課題があると感じました。これから、どんな風に変わってゆくのか、注目です。

 

株式会社日本農業の内藤さんは、青森、長野のリンゴをアジア圏に輸出されている方ですが、輸出を行う際、日本で成り立っていたビジネスモデルをテーラリング(スーツなどを仕立てることを言う)しなければならないとのお話をされていました。

 

輸出となると、ロットが全てです。まず、輸出用に日本の従来の栽培法とは異なる栽培法を確立して、集約拠点はどうして、運搬はコンテナあたりどれくらい詰められるから・・とか、改善点は盛りだくさんでコスト改善も、収量(収入)に関する改善も、伸び代ありまくりな会社であり、事業だと感じました。

 

 

ビジネスモデルの構造が全然違う

お二人とも、「日本の農作物を海外へ輸出する」という点では同じですが(オイシックスは現状国内中心で事業を行なっている)、それぞれ売りに出すものが違い、そのためビジネスモデル等も違い、随分多様なんだなと感じました。

オイシックスのビジネスモデル。輸出の関しては、青果に関しては障壁があるため、サブスクリプション(定期購入)のモデルをサービスとして輸出しようと目論んでいる。

 

この多様さは、ターゲットにする国が異なることが要因として挙げられそうです。オイシックスが狙う海外市場は、香港、中国(未参入。目論んでいる)。一方、日本農業は、東アジアから東南アジアまで広く主なターゲットを置いているそうです。

 

参入する市場(国)が異なれば、その国で利益の源泉となる競争優位性も全く異なるため、ビジネスモデルも大きく変わるのだと思います。つまり、日本の市場で競争優位性を持っていて、ノウハウを海外に売りに出そうにも、それが優位性を保てないことが当たり前ということです。ゆえに、輸出に向けてテーラーメイドが必要と言うことですね。

 

 

ここで、先ほど申し上げたオイシックスの課題に戻ってくるのですが、高橋さん曰く、日本が目指す輸出額目標は1兆円。で、現状7千億円だそうです。その内訳が問題なのですが、官庁は「モノを輸出する」と言っているそうで、そこに高橋さんは「狭い視野」とおっしゃっています。至言ではありますが、実際に高橋さんの目論見を聞くと、以下のようにまとめられます。

 

輸出するものはモノ(青果物)輸出、サービス輸出、知財輸出の3種類があり、後ろの2つの扱いによって、1兆は簡単に超えられる。オイシックスの場合、サービス(サブスクリプションという概念)を売れる。知財に関しては、パクられた「WAGYU」などのブランドにライセンスをかけてゆくイメージ。今後に期待。

 

だそうなのですが、一方で中国はマーケティングに関しての思想が日本よりも進んだ環境であるともおっっしゃっています。つまり、輸出したはずのサービス(上の画像のサブスクリプション)自体が中国に模倣され、競争優位性が保てなくなる可能性ががあるのです。実際に、「模倣が起こった際の対処に関して、検討されていることがあるか」を尋ねると、「そこは、まだ弱いところ」なのだそうです。

 

まだ参入することが決まっただけ段階なので、実際のところはご本人もわからないようなのですが、オイシックスの競争優位性に関しても、「テーラーメイド」が必要なのだと感じました。一方で、参入してから、中国、日本の両国の違いを新たに発見し、模倣困難性を作り出せるかもしれません。

 

僕程度が気がつく課題ということは、輸出を考えている他の方も気がつくと思います。つまり、そこが輸出の関する参入障壁になっているとも言えます。つまり、この障壁をクリアしうるビジネスを持っているか、あるいは既存のビジネスモデルのテーラリングに成功をすれば、追随を許さないビジネスを構築することも可能なのです。オイシックスや日本農業にはその可能性を感じました。

 

ちなみに「働きたい!と思ったらいつでも来てください」と言われましたので、もし、この記事をご覧になった方の中でオイシックス、日本農業に興味が出たら、ぜひ、訪ねてみてください。僕も、もしかしたら採用試験を受けに行くかもしれません。受かる保証はないのですが!!

やてん

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