ブランドとはスパイスである。スパイスの歴史から学ぶ新奇・神秘の重要性とブランドの本質

ナツメグ。

 

ハンバーグなど肉料理の臭み消しに使われる香辛料です。ブラックペッパーやコショウ、カレー粉などと比べて、冷蔵庫にあるご家庭はかなり少ないでしょう。今は、ですが。今回は、今でこそ、香りを臭み消しとして使っているこのスパイスを覗き込み、時代を遡り、当時の人々の暮らしと自分を照合し、日常に潜むスパイスを探してみようと思います。

 

・・・まずは、しばらくの間、中世へ旅にでかけましょう。

ときは中世、ナツメグはコショウよりも高価で希少なスパイスでした。その価値の高さは、当時、同じ重さの金と同じくらいだったとか。ナツメグは当時、薬効があるとされていたようで、その点もあって、高価で取引されたのでしょう。

 

ナツメグの薬効が信じられていた時代、すでに欧州では薬草学が認知され、様々な薬効ハーブが存在したようですが、これらハーブが活躍した歴史は希薄であり、人々はスパイスを信じたようです。スパイスは、珍しさ、新しさ、謎めきが、価値を膨らませたいい例だな、と感じます。

 

そしてこれらの事実を知り、自分の思考は中世から全く変わっていないんだな、とも考えさせられます。

 

新奇・神話とブランド

ナツメグは、モルッカ諸島(現在のインドネシア)で生産、出荷され、インドの港へと海を渡り、中東〜エジプトの商人が買つけ、さらに動き、その先でイタリア商人に買われていったそうです。イタリア商人は、ナツメグがどのようなところで作られたものかを知らないがゆえに、その薬効に神秘性を感じ、高価であっても夢中に買い集めていたようです。

 

今すぐに手に入る薬草よりも、どこから来たかわからない、芳しいスパイスのほうが、効きそう!と思ったのでしょう。確かに、普段から見かける薬よりも、新しく異国から入ってきたものに期待してしまいそうです。

 

さて、現代に戻ります。

 

僕らはナツメグを薬として今日使用しないため、昔はそんなことやっていたんだねぇ、と、歴史に対して達観しがちですが、きっと数世紀後の人からすれば、僕らは同じく奇天烈に映るのではないかと思います。

 

化粧品の効果のどれだけを科学的に理解しているのか。バルクオムが非常に人気なのには、ナツメグと同じような心理が働いているように感じます。同じく、ダイエットサプリなどに使われている最新の研究で発表された特効成分(HB●A?)なども、同じです。新奇性や神秘性が力を貸しているように見えます。

 

新奇性や神秘性は、僕らの感情を昂らせ、今も昔もお金を動かし続けているように思います。ユダヤ、ギリシャ、イスラム、ヴェネチア、ジェノヴァ・・などの商人の魂が、そこらへんで息をひそめ、お金を集めているのかも、と思うと、ロマンを感じながらも、踊らされないように気をつけないとな、とも思います。

 

・・無理なのですけど笑

 

ブランドという神話

僕はISSEY MIYAKEのブランド哲学が好きです。最近新しくスタートした、A.POC ABLEというブランドラインのジャケットとパンツを持っています。素材は比較的安価なポリエステルですが、特殊な編まれ方なため、変わった生地に化けています。おそらく原価は安いであろうこの服を僕が買ってしまうのも、ブランドのストーリーや意味という神秘のベールや、特殊な編まれ方によって醸されるエキゾチックさに、どうしようもなく惹かれてしまうからなのです。

 

上述の話は、ブランド名が変われば、多くの人が理解を示してくれるのではないかと考えます。スパイスの時代も、現代も何も変わらないと思います。ただ、モノとしてのスパイスではなく、ブランドという名の無形のスパイスへと置き換わっただけのようです。

 

服の世界から、もう一つ例を挙げます。Raffael Caruso (ラファエル・カルーゾ)というイタリアのサルトリア(仕立て屋)をご存知な方は、かなり少ないでしょう。少なくとも僕は、今の所、新宿伊勢丹、東京ミッドタウンでしか見かけたことがありません。

 

このカルーゾのジャケットやコートは、高くて手が出ない、ほどでもないのに、非常に質が高く、知る人ぞ知る超高品質ブランドの一つです。カルーゾのコートを羽織ったときの感動は、一生忘れないでしょう。体にひたりと柔らかく、されど立体的に沿う生地、シルエットの美しさ、軽さ・・これで16万は安いな、と感じました(買っていないですが)。

 

カルーゾを愛す人は、ルイヴィトンやエルメスでジャケットやコートを買わないでしょう。作っているのが、同じカルーゾであっても。価格が違いますし、カルーゾのもつ深閑さが両者にはありません。なぜ世界2大ブランドとサルトを比べたかと言うと、実は、カルーゾは、ルイ・ヴィトンやエルメスなどブティックへ服を卸すOEM企業でもあるためです。

 

裏を返すと、ルイヴィトン、エルメスの服を買う人は、もの静かなイタリアのサルトの服が欲しいのではなく、ルイヴィトンの、エルメスの芸術性やストーリーを求めている、とも言えます。その神秘性、神話性故に、人はブティックに価値を感じ、高いお金を払いますし、ブティックは、絶えずその神秘性を維持、もしくは拡大させようとします。

 

農業の世界で例を挙げると、有機肥料もそうです。それぞれの配合している原料は非常に安価であるのに、ぼかし肥などのブレンド有機肥料は、「自然由来のもの使ってるし、良さそう」というイメージが膨らみ、多少高価であっても買われやすいです。資材屋は、これを高利益商品として拡販しています。

 

神秘・神話のスケッチ

散々、自分と神話を切り離し、客観的に見てきましたが、自分が新奇性・神秘性・神話を作り出す側になってもいいじゃないか、とも思いますし、その際には、世に存在する先人を観察することは、良い示唆を僕らに与えてくれるのではないか、とも思いました。

 

その際は、現代だけに目を向けるのではなく、はるか昔、ミルラや乳香が莫大な利益をアラビアにもたらした時代から、絹の時代、スパイスの時代、綿の時代など、あらゆる時代を詳細に観察し、景色を立ち上げ、参考にしようと思いました。

やてん

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