「農薬の蜜蜂への影響評価法に関する検討会」に参加してきました
1月の28、29日はグローバル特許フォーラムに、本日は「農薬の蜜蜂への影響評価法に関する検討会」に参加してきました。2日に渡った特許フォーラムでの情報収集は情報量が多すぎて、その処理に疲れ果て、とうとう記事を更新せずに寝てしまいました笑 こちらも記事にしようと思っていますが、とりあえず今回は後者の農薬に関する検討会に関して整理をしておこうと思います。
農薬の蜜蜂への影響とは
今までも結構な頻度で話題にしていましたが、日本は農薬に関する規制が先進国の中では緩いです。一方でEUの方で盛んに言われ、また日本においても数件の養蜂家が主張しているようですが、農薬の散布によって蜜蜂の生態に影響を与えるとされてきました。
また、EUや米国に比べて日本はそういった症例に関してデータの蓄積をするにもかなり遅れています。1年後にはオリンピックも控えており、風当たりを考慮してか、そろそろ規制をせねばと、今回に至るように思います。そんな蜜蜂への影響を考える検討会ですが、今回は2回目でした。記事にはしていませんでしたが僕は前回の検討会にも参加していました。
今回はそのまとめと考察ですが、第一回も合わせて全体を通して感じたことが二つあります。一つ目は、今回の法改正では、農薬メーカーや生産者への影響は小さそうだが、データの蓄積に伴って事情が変わってきそう、ということです。もう一つは議題に頻繁に上がっていたワードに対しての推測ですが、農薬の中でも、神経毒系や、脱皮阻害剤に関して農政局は特に神経質になっているということです。今後、この辺りの規制に関しては注意していなければならなさそうです。とりあえず、今回のまとめを下に記述しておきます。
今回の検討会を通して起こる変化
結論からまとめると、今回の検討会では、以下のことが提案されました。
①農薬評価の多段階化
②毒性指標の基準をEU並みに引き上げる
まず、①に関してまとめます。
①農薬の多段階評価
今までの評価では、単回の農薬暴露だけによって蜜蜂が影響を受けるかどうかを調査していましたが、今後は、調査が厳重になりそうです。また、新薬からのスタートというわけではなく、既存の農薬に関しても、影響を与えていそうと考えられているものに関しては優先的に再評価を行なっていくそうです。新たな毒性評価の流れを、下に画像で示します。

まず変わったところは、蜂個体で、単回の暴露毒性だけでなく、反復の暴露毒性に関しても評価をするところです。これでも調査は大変だろうに、更に、蜂の群に関しても調査を行うというのです。もちろん、画像にあるように各段階で基準値を満たさなければ評価も早く終わるのですが、※1 にあるように、単回で問題なくても反復毒性を調べる農薬は結構ありそうで、この辺が大変そうだと個人的には予想しています。
ちなみに※2に関しては、これまでと同様に、使用者に注意喚の表示を必要とするとのことです。
また、※3に関しては、「蜜蜂が農薬暴露した花粉を取りに来ないように、開花時期には散布を控える」などの条件が追加される模様で、これについてはウリ科作物(ex. キュウリ)などでは少々風当たりが強くなる可能性があります。ウリの花には「アザミウマ」と呼ばれるウイルスを媒介する害虫が寄ってくるのですが、その防除に使う薬品の多くは、蜜蜂の生態の撹乱に作用する可能性がある神経毒系の農薬なのですから。
②毒性基準がEU並み以上になる
登録されている農薬に関しては、日本とEUを比べると圧倒的にEUが少ないのですが、それは、上のような評価体系と評価に対して「使用禁止」を宣言するところにあります。日本らしいなと思うのが、使用禁止までは行かず、使用方法を制限するところで留めるところです。
故に登録数が大きく変わることはなさそうですが、制限がかかることは大いにあり得るというのが個人的な印象です。というのも、どうやら毒性基準に関してはEUと足並みを揃えるらしいのです。毒性評価に関してはそれだけで長くなるので詳しくは書きませんが、実験で行う暴露量に関しては、「農薬風呂に無理やり浸らせているレベル」です。
安全性を考えれば、「それだけの量を暴露させても問題なければ安全だ」と言い切れるのは安心ですが、この厳しさではどうも「基準以上」になり得るのではないかと感じました。
まだ危険だとは決まっていない
散々に農薬の規制に関して考えてきましたが、当然ながらデータがまだ揃ってもいない段階では農薬が危ないなどとは言い難く、僕としても、擁護もしないが反対もしない立場です。逆にデータがないから規制もできなかったというのが本当かもしれませんが。
何にせよ、安全とは言い切れないところもあるのは事実です。また、冒頭で述べたように委員の方や農政局が神経毒やIGR剤に対して神経質になっているところが少々気がかりです。今後の再評価、データの蓄積、およびデータベース化に注目です。